思いをつなぐ、夢をはこぶ 北海道新幹線の開業に関わる人々の「思い」に触れるインタビュー

135年の歴史を持つ老舗と全国初の先進的なファンド両者をつなぐ地域への『想い』 株式会社 五島軒 代表取締役社長 若山 直 さん(わかやま なお)さん

青函圏の新たな時代を象徴する商品づくりのために

老舗レストランが持ち続ける先駆者精神
明治12年創業。135年という歴史を持つ五島軒は「開港都市」函館の中でも最も古い企業のひとつです。五島軒という店名の由来は、初代料理長の五島英吉。長崎奉行所で通訳をしていた五島英吉は、後の箱館戦争で旧幕府軍に加わります。敗戦後は残党狩りから逃れ、函館ハリストス正教会のニコライ神父にかくまわれて従者として働くことになります。
五島英吉は、その真面目な性格からロシア料理の腕をめきめき上達させ、4年目から7年間コック長を務めます。その当時、パン屋を経営しながら料理店の開業を夢見ていた初代経営者の若山惣太郎と出会い、レストラン「五島軒」のコック長に就任。「函館は開港都市でしたので、外国人が多く、外国の食材や文化が入って来やすいという土壌がありました。だから、当時は目新しかったパンとロシア料理の店が認知されたのだと思います」。と四代目の若山直社長は言います。135年前に最先端のレストランとして誕生した五島軒は、今もなおその先駆的な精神を持ち続けています。
大火での消失や、米軍の接収など多くの時代の荒波にもまれた五島軒本店

大火での消失や、米軍の接収など多くの時代の荒波にもまれた五島軒本店

本店内は豪華な装飾がほどこされた、贅沢な空間が広がっています

本店内は豪華な装飾がほどこされた、贅沢な空間が広がっています

ファンドからの資金を利用して拡充した本店の売店スペース

ファンドからの資金を利用して拡充した本店の売店スペース

商品パッケージには北海道新幹線の開業をPRするシールが貼られています

商品パッケージには北海道新幹線の開業をPRするシールが貼られています

山積する難題を解決する新たな方法
現在五島軒では、フランス料理やロシア料理、欧風カレーを市内のレストランで提供するほか、各所にある販売店でレトルトや缶詰のカレーをはじめ、ケーキなどのスイーツを販売しています。
「五島軒のケーキは、長らくフルコースのデザートとしての位置づけだったので、良くも悪くも象徴的な商品が無かったんです。それで、地元の素材を利用した商品を作ろうと考えました」。若山社長はレストランのスタッフと共に多くの試作品を作りました。その中で目をつけたのは「リンゴ」。道南の七飯町は西洋リンゴ発祥の地であり、青森県はリンゴ生産日本一の地。2005年の北海道新幹線工事着工で開業への気運が高まったものの、その雰囲気がやや停滞していた2010年に「函館ロール」ができ上がりました。しかし、土産物として本格的な製造をするにあたっては、まだ課題がありました。「美味しければそれでいいという事ではありません。できたての高い品質のままで流通させるための急速冷凍機など、良い商品をお客様にお届けするための設備投資が必要だったんです」。若山社長はそのための様々な方策を練ります。その中で声をかけられたのが「青函活性化ファンド」でした。
想いを実現する青函連携の新ファンド
「青函活性化ファンド」とは、北洋銀行や青森銀行などの民間企業と、政府などが出資する地域経済活性化支援機構が設立した官民連携ファンドで、北海道への新幹線延伸を見据えて、青森・函館の両地域の産業振興や、地域活性化を目指して作られたものです。
「青函活性化ファンドは、生産ラインの整備、急速冷凍システムなどの設備投資の面で、私たちの抱えている課題を解決してくれるものでした。しかしそれ以上に、函館と青森の素材を使った商品をたくさんのお客様にお届けしたいという、私たちの想いに応えてくれるものだと感じました」。若山社長は、五島軒スタッフのアイデアと、これまで培ってきた技術の蓄積を結集。そこに全国初の試みである異なる地域の金融機関が連携するファンドのサポートを受けて、「函館ロール」の本格的な生産にこぎつけます。
「新幹線で新たに幕開けする青函地域の象徴的な商品に」という若山社長の言葉通り、函館ロールは両地域らしさを象徴する様々な要素があります。トンネルに見立てたロールケーキの形状。その上に乗るのは、焦がし砂糖で風味付けされた青森産のリンゴ。そして、中にたっぷり入る特製生クリームには、食べやすくカットされた七飯町産のリンゴと、しっかりした風味のリンゴペーストが入ります。函館ロールは、青函地域のリンゴを一度に味わえる一品として、地元函館市民はもとより、函館を訪れる観光客にも大好評です。
「函館ロール」は、しっかりとリンゴの風味を楽しめることで好評

「函館ロール」は、しっかりとリンゴの風味を楽しめることで好評

これからの青函地域を見据えて
北海道新幹線は1973年に整備計画に入り、長い準備期間を経て2005年に着工されます。その着工からも数年が経ち、地元函館では「新幹線はずっと先の話」という雰囲気が蔓延しつつありました。「なかなか実感がわかないのは仕方のないことだと思います。でも、新幹線開業は待ってくれないので、誰かが率先して引っ張らなければならない。五島軒の取り組みが、開業までの雰囲気づくりに役立ってくれれば」と若山社長は言います。
現在、五島軒では青森産ホタテを使った「海鮮カレー」、青森産ふじりんごを使った「アップルパイ」を販売していますが、青函活性化ファンドのサポートを得て以降、五島軒の想いに共感を持つ様々な企業からの引き合いが来ているそうです。「跳ぶには助走が必要です。それが成功するかしないかはわかりませんが、今はしっかりと走るべきだと思います」。
未来をしっかりと見据え、今できる事をきっちりやる。若山社長は率先してその見本になることで、地域をつなぎ、地域を盛り上げようとしています。
幅広い世代が楽しめる、重厚感にあふれた本店レストラン雪河亭の前で

幅広い世代が楽しめる、重厚感にあふれた本店レストラン雪河亭の前で

道南と青森をひとつの経済圏にする青函活性化ファンドへの期待

上記のインタビュー内にも登場した「青函活性化ファンド」について、北洋銀行地域産業支援部の担当者にお話を伺いました。

海峡を越えた銀行が連携したファンド
平成26年5月26日に設立された青函活性化ファンド(※以下「当ファンド」)は、「北洋銀行」と「青森銀行」が主体となり、ファンド運営子会社の「株式会社北洋キャピタル」「REVICキャピタル株式会社」と連携して設立した官民連携ファンドで、総額2億円を出資して青函地域の事業者への投資を行うものです。官民連携活性化ファンドとしては全国2番目ですが、北海道と青森県のように異なる都道府県の銀行が連携する官民連携活性化ファンドは全国初の試みであり、また活性化案件としては当ファンドの「株式会社五島軒」が全国第1号となりました。
青函の企業・事業の良きサポート役に
北海道新幹線開業を見据えた青函地域のさらなる発展のため、北洋銀行と青森銀行は平成24年12月に連携協力協定を締結し、ATM相互開放や人的交流などで連携を深めてきました。当ファンドはその発展型として、青函地域のより一層の活性化を図るために設立したものです。新商品開発や販路拡大など、前向きな事業を行うことで青函地域の活性化や地域の発展に資する案件を対象に、成長資金の供給や継続的な経営支援を行うのが趣旨です。青函圏の企業や事業に投資することで、道南と青森をひとつの経済圏にするサポート役ができればと考えています。
豊かなストーリー性を持つ第1号案件
ファンドにとって重要なのは投資案件です。当ファンドを設立するにあたり、第1号の投資先として、函館の「株式会社五島軒」を念頭に置きました。創業135年を誇る函館屈指の老舗が、青森産りんごと七飯産りんごを利用した「函館ロール」という商品を開発したというストーリー性は、当ファンドの目的に合致しており、また五島軒というブランドが設立のニュースバリューを高めてくれると判断しました。第1号案件として、販路拡大のための冷凍機導入や本店内売店の拡大など、函館ロールをより多くのお客様にお届けするためのお手伝いができたことを嬉しく思います。

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