思いをつなぐ、夢をはこぶ 北海道新幹線の開業に関わる人々の「思い」に触れるインタビュー

北海道新幹線でまちも人もそして自分も変わる 木古内町まちづくり新幹線課新幹線振興室 地域おこし協力隊 新幹線地域活性特命チーム 「はやぶさ03」 浅見尚資さん

北海道新幹線開通のニュースで町が活性化

この場所で新たな自分に出会いたい
木古内町は、道南地域に位置する海の幸・山の幸に囲まれた人口約5千人のまちです。
現在は、2013年3月開業予定の北海道新幹線において、北海道で最初の駅ができるまちとしても注目されています。その木古内町で新幹線振興室スタッフとして勤務しているのが、浅見尚資さんです。
木古内町は、2012年7月から、地方が都市部から人材を受け入れ、まちの地域振興活動を行う、国の「地域おこし協力隊制度」を活用し、浅見さんを雇用。現在は「新幹線地域活性特命チームはやぶさ03(スリー)」として、木古内町をはじめ、渡島西部と檜山南部の9町(知内町・福島町・松前町・上ノ国町・江差町・厚沢部町・乙部町・奥尻町・木古内町)の観光情報の収集と発信、そして様々な企画提案を行い、地域全体の観光客の増加を目指しています。
浅見さんはもともと千葉県出身。東京で進学した後、都内のパソコン周辺機器メーカーの営業職として長年働いていましたが、心機一転して新たなことにチャレンジしたいと思うようになりました。
その後、転職サイトで見つけた「地域おこし協力隊」の仕事に興味を持ち、これまで営業職で身に付けたコミュニケーション力が生かせると思い応募。今まで、北海道は旅行や仕事で数回来たことがある程度。まして木古内町は見たことも聞いたこともない場所でしたが、浅見さんにとっては、不安よりも新たなことへのチャレンジの方が勝る勢いでした。
2013年3月に発行した「木古内鉄道まち歩きマップ」

2013年3月に発行した「木古内鉄道まち歩きマップ」

  • 2013年8月に発行したスピンオフ企画「JR江差線全10駅制覇にチャレンジ!」
  • 2013年8月に発行した
    スピンオフ企画
    「JR江差線全10駅制覇
    にチャレンジ!」

  • 「ぶらり鉄まち木古内の旅」の表紙にも採用された、江差線を走る「特急白鳥485系」
  • 「ぶらり鉄まち木古内
    の旅」の表紙にも採用
    された、江差線を走る
    「特急白鳥485系」

江差線が廃止し、北海道新幹線が走るまちへ
2012年の夏から秋にかけ、浅見さんは昼休みや帰宅時に、木古内駅である光景を目にしました。それは、JR江差線(木古内駅~江差駅間)廃止の情報を聞きつけ、全国からやってきた多くの鉄道ファンが、乗り換え待ちのため駅前で時間を持て余していたところでした。
「鉄道ファンの方々にもっと町内の見所やグルメスポットなどを提案しなければ、木古内町が単なる通過地点になってしまう」。
その様子に危機感を覚えた浅見さんは、鉄道を利用した観光振興策を実施しなければと感じました。ちょうどその頃、木古内町では北海道新幹線開業を間近に控え、さまざまな取り組みについて話し合いがもたれていました。大きく分けて四つのテーマが挙げられました。
一つ目は、「木古内駅の利活用を促進させること」。たとえば、木古内駅開業を前面に出したインパクトのあるPR素材の開発。山本寛斎氏プロデュースのマスコットキャラクター「キーコ」を活用した開業PR、木古内高校最後の卒業生による駅デザインの選考などが挙げられました。
二つ目は、「木古内町の近隣のまちと連携した広域観光を展開させること」。これは、9町(知内町・福島町・松前町・上ノ国町・江差町・厚沢部町・乙部町・奥尻町・木古内町)の広域観光の案内人「観光コンシェルジュ」の育成、広域観光の拠点施設となる「木古内町観光交流センター」の建設。
そして、三つ目は「地域の特性を生かしてまちの観光の魅力を向上させること」。木古内特産「はこだて和牛」のブランド化、木古内らしい魅力あるお土産品の開発、道南杉を生かした魅力ある商店街作り、体験観光の推進、観光客のまちなか回遊促進、鉄道愛好家の誘客、おもてなしの心作りなど。
最後の四つ目は、「木古内駅を核とした利便性の高い魅力的なまちづくりにすること」。これは、駅前広場や駐車場、公園など、観光客が立ち寄りたくなる魅力的な空間を整備すること。
それぞれの具体的な施策は進み、浅見さんは、まずは第一弾として、町内の鉄道&グルメスポットをまとめた「まち歩きマップ」を作成し、各所で配布しようと考えました。
町民のあふれる木古内町への思い
早速、新幹線振興室内では編集会議が開かれました。「どうやって木古内をPRしたらいいか」。町民にも尋ねてみました。ここ木古内町は、昔から鉄道の分岐点として渡島半島西部で重要な地点だった場所。いざ「鉄道」に着目してみると、今回のマップのように、いくつも見るべきポイントが見えてきました。
さらに、まちの若手経営者からも、まちコンの開催や江差線特別列車の運行、江差線グッズの開発などの地域活性につながる企画が挙げられました。
まちで開かれた部会では、はじめはまちの魅力をうまく語れなかった町民たちも、徐々に口を開き、「実はこんな良いところがあった」というさまざまな声が聞かれました。浅見さんは「木古内町には奥深い魅力がある。いざとなれば町民は大きなパワーを発揮する」と改めて木古内町の魅力を実感しました。まずは、全国の鉄道ファンに気軽に木古内町に興味を持ってもらおうと、木古内町の人気メニュー「ほたて炙り丼」が食べられる店舗情報一覧や北海道新幹線木古内駅の工事現場の写真などを盛り込み、「まちの今」を感じられる編集内容に決めました。
境内の敷地内に線路が走る木古内町の禅燈寺

境内の敷地内に線路が走る木古内町の禅燈寺

JR木古内駅でマップを告知するポスターを掲示

JR木古内駅でマップを告知するポスターを掲示

第1号のスピンオフ企画も発行
編集作業中、新たな出会いもありました。フェイスブックで知り合った松前町の歴史ガイドを務める鉄道ファンから、編集内容について意見交換会が開かれました。鉄道ファンならではの旅の楽しみ方や視点に良い影響を受けながら、構想から制作まで約2カ月で「ぶらり鉄まち木古内の旅」が完成しました。
木古内町の駅と役場をはじめ、函館駅と江差駅、そして木古内町のホームページやフェイスブックページからもダウンロードできるようにしました。
その後、木古内町では、一人旅の鉄道ファンやカップルなど、幅広い層がマップを片手に歩く姿が見られるようになりました。予想以上の反響に手ごたえを感じた浅見さんは、「ぶらり鉄まち木古内の旅」のスピンオフ企画として「JR江差線全10駅制覇にチャレンジ!」を8月に発行しました。これは、1日でJR江差線(木古内駅~江差駅間)の全10駅に降り立つことを目的とした時刻表や、降車後の楽しみ方を紹介するというもの。鉄道ファンとの意見交換会の中で生まれたアイデアを取り入れました。裏面には、町内の宿泊施設を併せて盛り込み、多くの人に長く滞在してもらえる内容にしました。
町民とともに変化するまち
新青森駅から青函トンネルをくぐると、道内ではじめての駅となる木古内駅。現在検討している開業にちなんだ施策の推進や、鉄道ファンだけでなく幅広い層にまちのことを知ってもらい、少しでも多くの人に来てほしい、と使命感に満ちた想いを語ってくれた浅見さん。「最初は寂しいまちだと思っていたけど、いろいろ町民の方と話してみて、まちの人が変わろうとしているのがわかりました。皆さんが頑張っているので、自分自身のやる気にもつながっています」。
新幹線駅開業を前に、町民との連携による魅力的なまちづくりが求められています。今後は、マップ内容のリニューアルや、スピンオフのようなユニークな企画の立案、そしてさらに広域への配布を検討しています。
編集作業は浅見さんが一人で担当した

編集作業は浅見さんが一人で担当した

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